なんで不思議の国のアリスは

穴の中に落ちていくとき

目を覚ましてしまわなかったんだろう




        [ 好奇心は災いの元 ] 



髪の毛まで飛んでいきそうな春の強風。
それでも、桜が混じる春風は美しい。そんな朝。
柔らかな陽光は全てに光を注ぎ込んで、一人なのに鼻歌でも歌ってしまいそう。
ざくざくと土を踏む音すらリズムに変えて、私は歩いていった。

「お早う御座いますッ!」

勢いよく、それでも無作法な音は立てないように戸を開けて。
明るくはないけれど居心地のいい講堂は
ステンドグラスが春の光を七色に染め上げている。
この場所が 私が堕ちていく場所。

「お早う御座います。毎朝熱心ですねぇ」

ほっこり微笑む神父様。ああ、朝から右ストレート。撃沈。
緩み過ぎない笑顔って、難しい。

「本当風強いですね。飛ばされるかと思いました」

慌てて手櫛で髪を整える。寝癖はちゃんと直してきたよね。
服、変じゃないかな。顔大丈夫かな。
ひとつが気になると全部が気になってくる。…鏡欲しい…。
きょ、挙動不審はやばいよ自分。
落ち着けと思うほど焦る自分に一番焦る。

と

「本当だ。ここ絡まってますね。ちょっと待ってください」

ふわりと、暖かい風。伸びる影。付かず離れずの体温。
触れる指先。
カーターさんが、私の髪の絡まりを解いていく。

頭は真っ白。心で絶叫。

止めて!いろいろ出そうだから!!どうしようもないから!!
なんて言えるはずもないけど。
だって やっぱり嬉しい。

「さ、取れました。じゃあ始めましょうか。」

離れていく黒い背中。
私の髪の毛は春が来たように暖かい。
うう、私の馬鹿。また募ってしまったじゃないの。


叶う筈もない 不透明な想いが。


 ― ・ ― ・ ― ・ ―



私が教会に通いだして早くも半年以上が過ぎた。
この町に来たのは約1年前。いろいろなことがあった。
たくさんの出会いがあって、たくさんの出来事があって。

なのに 神様がいるならなんて残酷

私が欲しいのは、あなたの所有物

あなたに全てを捧げると契約して

無償の笑顔を振りまいてる 愛しい人

救いなんて本当は求めてない

救われなくてもいいから欲しいものがある

どうすればいい


 ― ・ ― ・ ― ・ ―


「それでは礼拝を始めます。今日の聖書の箇所は…」

矛盾の始まりを告げる声。
ごめんね。
出会いを与えてくれたことは感謝してる。
でもね神様。
あなたが 心底憎いよ。







アリスが目を覚まさなかったのは

悪夢だってわかっていても

その夢を見ずにはいられなかったからだね。










― ・ ― ・ ― ・ ―


初カークレ。なのに暗ッ!!
おかしいな。こ、こんな筈じゃ…!!!
思いつけば続きます。思いつかなかったら続きませ…。
2006.4.5